文政元年・創業「和泉庄」
信州の穏やかな城下町・飯田は現・松尾町にて、和漢砂糖・諸国銘茶・畳表類・西洋物類・石油生掛等を取り扱っていた、砂糖荒物商・和泉屋と、精製菓子類・和漢砂糖・各国銘茶等を取り扱っていた、御菓子舗・和泉屋。それぞれの商いの時代を経て、文政元年(1818年)和泉屋庄三郎により菓子処「和泉庄」(いづしょう)は創業しました。
江戸の頃には、飯田城主御用達の御菓子司としての誉を頂き、明治期頃より飯田を代表する文化著名人とのご縁の数々を預かりました。時代を彩り、人々の縁となった菓子の数々は、数多の歴史と共に代々受け継がれ、現在に至ります。江戸期を過ぎ、かつての飯田城の堀もその姿を隠してしまった後、店舗もまた時代の変遷と共に、その地名に掘跡の名残をとどめる現在の堀端角(飯田市銀座通り)へ移り継がれています。
数ある生菓子の中で「名代大きんつば」は、初代庄三郎より数えて現在8代目により“一子相伝”の手造りの味を守りつくり続けている、和泉庄を代表する銘菓です。江戸の頃に広く商家や庶民の間に普及した生菓子は山城の地であった飯田にも伝わり、その中で和泉庄は、当時大変貴重であった小豆餡を炊き直し、また焼き直して、今日のきんつばの原形を作り上げてきました。小豆本来の旨みを出すため、甘さを控え目に工夫したその味わいは、永く評判を頂いております。